適応障害
適応障害とは
日常生活のストレスにうまく対処できず、心身に様々な症状が現れ、社会生活に支障をきたす障害を適応障害といいます。誰しもストレスを感じることはありますが、適応障害の場合、そのストレスに対する反応が大きく、日常生活に支障をきたしてしまいます。頻度の高い疾患で、外来でこころの相談に来られる方のうち、5~20人に1人は適応障害を主診断としています。うつ病などの重篤な精神障害への移行を防ぐため早めの治療が大切です。
このページでは、適応障害の概要について説明するとともに、症状、原因、治療法、予後について分かりやすく解説します。
適応障害の症状
適応障害の症状は、人によって様々ですが、主な症状は以下の通りです。
気分の症状
- 気分が落ち込む
- 不安感
- イライラする
- 集中力が低下する
- 落ち着かない
- 悲しくなる
- 涙が出てくる
- 死にたい位辛くなる
身体の症状
- 怠い
- なんだか疲れている
- 頭痛
- 腹痛
- 動悸
- 息切れ
- 不眠
- 食欲低下
- 吐き気
行動の症状
- 仕事や学業の成績が低下した
- 無断欠勤が増える
- 自宅にいる時間が増える
- 暴言を吐いてしまう
通常はストレスから1か月以内に症状が出現し、6か月以上は続きません。これらの症状により日常生活に支障をきたしている場合は、適応障害の可能性があります。
適応障害の原因
適応障害の原因は様々ですが、主な原因は以下の通りです。
仕事
人間関係のトラブル、残業、転職、昇進、降格、リストラ
学校
いじめ、受験、進学、教師とのトラブル、学業へのプレッシャー
家庭
死別、介護、家族関係の悪化、結婚、出産、離婚
経済
失業、借金、貧困
その他
失恋、病気、引っ越し、自然災害
適応障害の治療法
適応障害の治療法は、症状や原因によって異なりますが、主な治療法は以下の通りです。
休息
まずは、うつ病の治療と同様に、ご本人と周囲の人が病気を理解し、「こころ」と「からだ」をできるだけ早く十分に休ませることが重要です。
精神療法
適応障害に対する精神療法には支持的精神療法などがあります。患者さんは、「新しい環境などの変化に対応したと努力したがうまくいかなかった」などと挫折感を感じており、診察時に「頑張ったのにだめだった」「能力がない」などと涙を流して訴える患者さんも少なくありません。まずは、患者さんの話を否定せずに支持的に傾聴することで、ストレスとなる出来事から受ける障害を最小限にとどめ、患者さんが前向きなエネルギーを取り戻す手助けをしていきます。その上で、患者さんが無力感を克服して自ら問題を解決し、自ら生活のコントロールをして行けるように援助していきます。
薬物療法
抑うつ状態や不安感など特定の症状に対して、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬を使用することもあります。
適応障害の予後
適応障害は、適切な治療を受ければ、多くの場合数ヶ月で治癒します。しかし、治療を中断したり、ストレスの原因を取り除かずそのまま放置すると、症状が長引いたり、悪化したりする可能性があります。
適応障害は、誰にでも起こりうる病気です。適応障害かもしれないと感じたら、一人で抱え込まず、早めにご相談下さい。