心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは
心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、自然災害や交通事故など、命を脅かされるような強い恐怖を感じる出来事を経験したり、他人の死を目撃した体験など、非日常的なストレスにさらされる「トラウマ」の後に発症する精神疾患です。通常はこのような体験の後、数週間から6か月以内に症状が出現します。大きな災害などでは10%の人がPTSDを発症すると言われており、女性の方が男性より2倍多い事が知られています。
このページでは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の概要について説明するとともに、症状、原因、治療法について分かりやすく解説します。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状
PTSDの症状は大きく3つに分類されます。
1. 再体験症状
- まるでその場にいるかのように、不快で苦痛なトラウマ体験が突然よみがえってくる(フラッシュバック)
- 不快で苦痛なトラウマ体験に関する悪夢を繰り返し見る
- 何かの刺激によって不快で苦痛なトラウマ体験を思い出すと、気持ちが動揺したり、動悸や冷や汗が出現する
2. 回避・鈍麻症状
- 不快で苦痛なトラウマ体験を思い出させる場所や人や物などを避ける
- 出来事の一部を思い出せなくなる
- 感情が麻痺し、楽しいなど陽性の感情を体験できない
- 他人との関わりを避ける
- 無関心・脱力感
- 現実感がない
- 将来への希望が持てない
3. 覚醒・亢進症状
- 眠れない
- いらいらする
- 過度の警戒心
- ちょっとした刺激に過剰反応する、びくびくする
これらの症状は、自然に回復する方もいますが、長期的に症状が続き、日常生活に深刻な障害を与え続けることもあります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の原因
PTSDの原因となるトラウマ体験は様々ですが、一般的には以下のようなものが挙げられます。
- 地震、洪水、火事
- 交通事故
- 虐待(DV)
- 強姦
- 戦争
- テロ
これらの出来事により、強い恐怖やショックを感じ、大きな負担がかかり、その結果、ストレスホルモンが過剰分泌されることが原因になると言われています。
また、脳の特定の部位の大きさなども関係していると考えられています。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療法
まずは、患者さんに対して支持的に接し、その出来事を話し合えるように励まし、リラックスする方法などをお伝えします。トラウマ体験を話すように励ます上で重要なのは、その人のペースで進めることです。トラウマ体験が過ぎてから十分な時間が経過しないと話す気にならない患者さんがいますが、その気持ちは尊重すべきです。実際に話すことを嫌がっている患者さんに無理やり話させようとすると病状が悪くなると言われています。
PTSDの治療法としては、主に以下の2つがあります。
薬物療法
脳内のセロトニンという神経伝達物質に作用する抗うつ薬(SSRI)が第一選択になります。他の種類の抗うつ薬やてんかんの薬の有効性も報告されています。一時的に抗不安薬を使用することもあります。
精神療法
心理教育や認知行動療法があります。心理教育では心的外傷後ストレス障害(PTSD)について説明し、良く理解してもらい、時間経過とともに回復する事などを知らせて不安軽減を図ります。認知行動療法には様々な種類があります。回避している対象に徐々に接近したり、トラウマ体験を思い出して話してもらう事を繰り返す暴露妨害法という方法や、トラウマ体験によって変化したネガティブな思考を論理的で有益な考え方に修正を促す認知再構築という方法があります、他にも、トラウマ体験を思い出してもらいながら、医師の指が動くのに合わせて目を動かし、その状態でトラウマ体験を再度体験することにより症状を和らげる、眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:EMDR)という方法も有効とされています。
治療法は、患者さんの症状や状態に合わせて決定します。
うつ病や依存症を合併している可能性も高い疾患のため、早めの受診をお勧めします。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)かもしれないと感じたら、一人で抱え込まず、早めにご相談下さい。